「共感の場」か「誤情報の温床」か──子宮内膜症とSNSの両面性

子宮内膜症は、生殖年齢の女性のおよそ10%、世界で1億9,000万人が経験するとされる慢性の炎症性疾患です。月経痛や性交痛、慢性骨盤痛、不妊など多様な症状を伴い、うつや不安といった心理的な負担、生活の質の低下も指摘されています。症状が正常な月経の一部として片づけられやすいことや、診断に至るまでの過程の複雑さから、発症から診断確定までに5〜12年を要するとされてきました。

こうした背景のなか、多くの患者がFacebook、Instagram、TikTok、YouTube、Redditといったソーシャルメディア(SM)や、オンライン患者コミュニティを利用し、体験を共有し、助言を得て、症状管理の方法を探るようになっています。地理的な制約を越え、認知を広げ、仲間同士の支え合いを生む場として、SMは存在感を増してきました。一方で、そこで語られる医学情報の正確さについては、これまで断片的な報告にとどまっていました。

このような状況を受け、SM上の子宮内膜症関連コンテンツについて、利用者の特徴、共有される内容、情報の質、発信者の属性という4つの観点から、これまでの研究を包括的に整理した系統的レビューが、The Journal of Minimally Invasive Gynecology誌(2026年)に掲載されました(doi:10.1016/j.jmig.2026.06.035)。

方法──26本の研究を、4つの視点で整理した

対象となったのは、PubMedとScopusを用いて2025年12月28日までに検索された文献のうち、SMと子宮内膜症の関係を検討した原著論文です。単一のウェブページのみを対象とした分析や、非英語文献、原著でない記事は除外されました。スクリーニングの結果、1,311件の記録から最終的に26本の研究が採用されています。内訳は横断的な量的研究が8本、混合研究法が9本、質的研究が9本でした。

研究の質は、横断研究についてはNewcastle-Ottawa Scale、混合研究法についてはMixed Methods Appraisal Tool、質的研究についてはCritical Appraisal Skills Programmeのチェックリストを用いてそれぞれ評価され、全体として妥当な水準にあることが確認されています。抽出された変数は、SM利用者の特徴、共有される内容の種類、情報の質(DISCERNやPEMATといった標準化された評価指標、または専門家による判定)、そして発信者が医療者(HCP)か非医療者(non-HCP)かという分類です。

対象となった26本のうち24本(92.3%)は具体的なプラットフォームを特定しており、Facebookが最も多く9本(34.6%)、続いてInstagramが8本(30.8%)、TikTokとRedditがそれぞれ6本(23%)、YouTubeが4本(15.4%)、X(旧Twitter)が3本(11.5%)でした。分析対象は投稿やコメントといったSM上のコンテンツそのものを扱った研究が21本(80.8%)を占め、患者を対象とした調査・インタビュー形式の研究は5本(19.2%)にとどまっています。

SNSを使う人たちの横顔──診断までの平均10年

利用者の特徴を検討した7本の研究では、若年層が中心的な利用者層であることが共通して示されました。年齢データを報告した5本のうち、ある横断研究では利用者の年齢中央値は30歳、別の2本では平均年齢が31.4±7.3歳、32.1±7.3歳とされ、さらに別の研究では利用者の69%が25〜44歳でした。一方で、10代のうちからSMでの関わりが始まっているとする質的研究も存在します。

心理的な側面を扱った4本の研究のうち、量的な比較を行った1本では、SM利用者は非利用者に比べて不安を訴える割合が高く(75% 対 42%)、抑うつについても同様の傾向(61% 対 25%)が示されました。残る3本の質的研究でも、利用者に共通して大きな心理的負担があることが一貫して報告されています。

医療へのアクセスに関する不満も目立ちました。ある研究では、SMで情報を求めていた患者のうち、実際に医師から処方された治療を受けていたのはわずか30.4%でした。別の研究では、SM利用者の81.6%が診断過程を補う目的でSMを使っており、診断までの平均期間は10年に及んでいました。同様に、10年を超える診断の遅れや、医療者から症状を軽んじられたと感じた経験を経てSMにたどり着いた患者の様子を描いた質的研究もあります。

何が語られているか──体験談、症状、そして自己管理

共有される内容を検討した24本の研究のうち、最も多く報告されたのは患者自身の体験談で、研究によっては投稿の75%を占めていました。日常生活における負担、対人関係、仕事への影響、自己負担の医療費といった経済的な側面についても、質的な分析から語られています。

症状に関する内容は11本の研究で扱われ、投稿に占める割合は19.6%から88%までと幅がありました。最も頻繁に話題となる症状は月経痛(ディスメノレア)で、ある研究では投稿の約50%を占めた一方、別の研究ではわずか10%にとどまるなど、プラットフォームや調査方法によるばらつきが見られます。性交痛についての言及はさらに少なく、腹部の張りや消化器症状を指す「エンドベリー」と呼ばれる非公式な症状名も、セルフケアや患者アドボカシーの文脈で頻繁に取り上げられていました。不妊・妊孕性に関する懸念は10本の研究で報告されています。

疾患管理や治療に関する内容は15本の研究で扱われ、外科的治療の利点・欠点や、ホルモン療法とその副作用が主な話題でした。補完代替療法についての言及も6本の研究で確認され、非エビデンスに基づく治療を推奨する内容が2.8%から23.1%を占めるとする報告もあります。感情的な支え合いやアドボカシー活動も繰り返し取り上げられる主題であり、孤立感の軽減や仲間同士の支援がSMコミュニティの機能として質的に確認されました。医療システムや医療者への不信感を扱った内容は9本の研究で報告され、いわゆる「医療的ガスライティング」に言及する投稿の割合は、研究によって5.9%から30%までの幅がありました。

情報の質は玉石混交──短編動画で目立つ低い信頼性

情報の正確さを標準化された尺度で評価した研究は8本ありました。TikTok上のコンテンツをDISCERNとPEMATの両方で評価した研究では、理解しやすさは中程度(75.3%)である一方、行動につなげやすさ(実際に何をすべきかの明確さ)は低く(10.7%)、信頼性の指標であるDISCERNスコアの中央値も5点満点中2点と、全体として低い情報の質が示されました。同様にTikTokを対象とした別の研究でも中央値は1点にとどまった一方、YouTubeを対象とした研究ではDISCERNスコアの中央値が3〜4点と、比較的中程度の質が確認されています。

専門家による評価を用いた研究では、プラットフォームによって結果にばらつきが見られました。Facebookの専用フォーラムや公開ページを対象とした研究では、教育的な内容の94%がエビデンスに基づいていたと報告された一方、Instagramを対象とした研究では、11の教育領域のうち根拠に基づく内容が50%を超えたのはわずか4領域にとどまるなど、混在した結果が示されています。

全体としては、TikTokやYouTubeなど短編動画中心のプラットフォームで情報の質が低い傾向にあり、コンテンツ全体のおよそ23〜24%に誤解を招く情報が含まれていたと推計されています。誤情報は治療選択に関するものが最も多く、ホルモン療法など根拠に基づく治療への懐疑的な見方を示しつつ、検証されていない代替的なアプローチを勧める内容が目立ちました。

発信者による差──量では非医療者、質では医療者

発信者の属性を検討した10本の研究では、コンテンツの発信者が医療者(HCP)か非医療者(non-HCP)かによって、内容の性質にも質にも明確な違いが見られました。医療者による投稿は教育的な内容が中心である一方、患者やインフルエンサーなど非医療者による投稿は、個人の体験談やピアサポートが主でした。ある研究では、医療系動画の96%が臨床的な説明や手術に関する内容であったのに対し、非医療系動画の96%は個人的な語りが中心だったと報告されています。

質を比較した7本の研究では、多くが医療者による発信のほうが正確であるという結果を示しました。ある研究では、准医療職(看護師や助産師など)による投稿が最も正確な内容を含んでいた一方(73.7%、p<0.001)、別の研究では医療者による動画のDISCERNスコアが患者による動画より有意に高いことが確認されています(5点満点中2点 対 1点、p<0.001)。非医師による発信のほうが有意に誤情報が多いことを示した研究もあります(p=0.0008未満)。ただし、YouTubeを対象とした1本の研究では、発信者による質の差は確認されませんでした。

発信量とエンゲージメント(閲覧数やいいねなどの反応)については、逆説的な構図が浮かび上がりました。Instagram、Facebook、TikTokを対象とした複数の研究では、非医療者がコンテンツ全体の80〜95%を占めることが繰り返し確認されており、非医療系動画のほうが医療系動画より閲覧数やいいねの数が多かったとする報告もあります。一方で、病院や医療機関のアカウントのほうが一般アカウントよりエンゲージメント率が高かったとする研究(Facebookで1.44%対0.88%、Instagramで3.33%対3.19%)や、発信者による差が見られなかったとする研究も存在し、必ずしも医療者の発信が一様に埋もれているわけではないことも示されています。

日本の生殖医療現場にとっての意味

日本の臨床現場でも、子宮内膜症を含む婦人科疾患に関する情報をSMで得ようとする患者は少なくないと考えられます。今回のレビューが示した知見は、SMが患者にとって仲間同士の支え合いや情報収集の重要な場である一方、そこで流通する情報の正確さは発信者によって大きく異なる可能性を示しています。診察室では、患者がすでにSMで得た情報を持って来院することを前提に、その内容を頭ごなしに否定するのではなく、どのような情報に触れているかを丁寧に確認したうえで説明を補う姿勢が、信頼関係の構築に役立つと考えられます。

また、医療者による発信の質が高い一方でその可視性や拡散力が必ずしも高くないという今回の知見は、医療者と患者のあいだで情報発信のあり方を見直す出発点になり得ます。学会や医療機関、あるいは個々の医療者による発信を、患者が実際に触れやすい形で届ける工夫が、今後の課題として位置づけられます。

研究の強みと限界

本レビューの強みは、量的研究と質的研究の双方を統合し、PRISMA 2020ガイドラインに準拠して方法論的な透明性を確保した点、そしてInstagram、TikTok、Facebook、Reddit、YouTube、Xという主要な6プラットフォームを横断して26本の研究を網羅した点にあります。NOS、CASP、MMATという複数の評価ツールを用いた質評価も、エビデンスの頑健性を支える要素となっています。

一方で限界もあります。研究デザインやプラットフォームの特性が多様であったため、メタ解析ではなく記述的な統合にとどまっています。また、横断研究が中心であるため、SM利用と心理的負担や診断の遅れとの因果関係を明確に結論づけることはできません。Redditのように匿名性の高いプラットフォームでは、利用者の属性や診断の実態を検証することが難しく、データの信頼性に影響した可能性も指摘されています。さらに、英語文献に限定して検索が行われているため、他言語圏への一般化には注意が必要であり、SMプラットフォーム自体が急速に変化し続けていることも、知見の時間的な妥当性に影響し得る点です。

おわりに

今回のレビューは、子宮内膜症をめぐるSMの役割について、これまでで最も包括的な整理を提供するものです。SMは、診断の遅れや医療への不満を抱える患者にとって、仲間同士の支え合いや情報収集の重要な場である一方、そこで流通する情報の正確さは発信者や形式によって大きく異なり、特に短編動画コンテンツでは誤情報の割合が高い傾向にあることが示されました。医療者による発信は相対的に信頼性が高いものの、必ずしも患者の目に触れやすい形では届いていない現状も浮き彫りになっています。今後は、医療者がSMという場によりいっそう関わり、患者の体験に基づく語りと科学的根拠に基づく情報とを橋渡しする発信のあり方を模索していくことが、課題として位置づけられています。

参考文献

1. Latini CM, Cremonesi M, Meschia V, Matrangolo R, Coro I, Leonardi M, Vignali M, Vercellini P, Salmeri N. The role of social media in endometriosis: a systematic review of users, content, information quality, and content creators. The Journal of Minimally Invasive Gynecology. 2026. doi:10.1016/j.jmig.2026.06.035.

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