妊活サプリは効くのか──体外受精を待つ213組が示した自然妊娠率の差

不妊は世界的に見て、カップルの10〜15%が経験するとされる問題です。体外受精(IVF)をはじめとする生殖補助医療は有効な選択肢である一方、身体的・経済的な負担が大きく、リスクもゼロではありません。そのため、IVFに進む前、あるいはIVFの順番を待つあいだに、より負担の少ない方法で自然妊娠の可能性を高められないかという関心が、以前から寄せられてきました。

葉酸やビタミンD、亜鉛、セレン、オメガ3脂肪酸といった個々の栄養素については、それぞれ妊よう性(妊娠のしやすさ)との関連を示す報告が積み重ねられています。しかし、複数の栄養素を組み合わせたサプリメントを、女性だけでなく男性パートナーにも同時に用いた場合に、自然妊娠率がどの程度変わるのかについては、これまで十分なデータがありませんでした。

こうした背景のもと、Revista da Associação Médica Brasileira誌(2026年)に、体外受精の順番を待つ213組のカップルを対象とした後方視的研究が掲載されました。夫婦そろって複合的な栄養補助食品を摂取した群と、女性のみ葉酸を摂取した群とで、6か月間の自然妊娠率を比較した内容です(doi:10.1590/1806-9282.20260081)。

方法──体外受精を待つ213組を、サプリの有無で追跡した

対象は、2021年1月から2022年1月にかけて、オーストリアとセルビアの生殖医療施設で体外受精の待機リストに登録されていた213組のカップルです。原因不明の不妊、または多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)などの妊よう性に影響する状態を持つ、18〜40歳の女性が対象とされました。卵管が両側とも閉塞している場合や、パートナーの精子所見が高度に不良な場合などは除外されています。

119組の治療群では、女性がオメガ3脂肪酸・ビタミンE・コエンザイムQ10・葉酸・セレン・カテキン・グリチルリチンを含む製剤を、男性パートナーがLカルニチン・Lアルギニン・コエンザイムQ10・ビタミンE・亜鉛・葉酸・グルタチオン・セレンを含む製剤を、それぞれ6か月間、または妊娠が成立するまで摂取しました。94組の対照群では、女性のみ葉酸400μgを摂取し、男性パートナーへの介入は行われませんでした。主要評価項目は、6か月以内の自然妊娠(血中ヒト絨毛性ゴナドトロピンと胎児心拍で確認)です。

自然妊娠率は66.4% vs 39.4%──オッズ比は4.13倍

6か月間の自然妊娠率は、サプリメント併用群で66.4%(119組中79組)、対照群で39.4%(94組中37組)となり、両群のあいだに明確な差が見られました(P<0.001)。月ごとの妊娠率を見ると、併用群では6.7%、16.8%、9.2%、18.5%、6.7%、8.4%と、対照群(6.4%、6.4%、8.5%、9.6%、2.1%、7.4%)を多くの月で上回る傾向が続いていました。

女性の年齢、BMI、喫煙・飲酒の有無、排卵誘発の有無、抗ミュラー管ホルモン(AMH)値、パートナーの精液所見を調整した多変量解析でも、サプリメント併用は妊娠のオッズを4.13倍(95%信頼区間2.12〜8.04、P<0.001)に高めるという結果でした。あわせて、母体年齢が高いほど(オッズ比0.87、P=0.002)、BMIが高いほど(オッズ比0.86、P=0.02)妊娠のオッズは下がり、AMH値が高いほど(オッズ比1.45、P=0.043)妊娠のオッズが上がることも示されています。これらは、サプリメントの効果とは別に、もともと妊よう性に関わることが知られている因子であり、今回の解析でも同じ方向の関連が確認された形です。

何が変わったのか──子宮内膜の厚さと、想定される作用機序

副次評価項目として、排卵期(月経周期12〜15日目)の子宮内膜の厚さも比較されました。開始前はサプリメント併用群9.1mm、対照群9.4mmとほぼ差がなかったのに対し、6か月後には併用群10.3mm、対照群9.5mmとなり、併用群でのみ有意な増加が見られました(95%信頼区間 -1.24〜-0.37)。子宮内膜の厚さは着床のしやすさに関わる指標のひとつとされており、この変化がサプリメントの効果を裏づける所見のひとつに位置づけられています。

想定される作用機序としては、葉酸やビタミンB群がホモシステイン代謝を整えることで排卵や胚の質への悪影響を減らす経路、オメガ3脂肪酸やコエンザイムQ10が卵子の質や酸化ストレスに関わる経路、そして男性側ではLカルニチンやセレン、亜鉛などが精子の運動率やDNA損傷に関わる経路が挙げられています。これらは主に他の研究で示されてきた機序であり、今回の研究自体が作用機序を直接検証したものではない点には注意が必要です。

研究の強みと限界

本研究の強みは、女性だけでなく男性パートナーにも標準化された介入を行い、実際の妊娠成立という臨床的に意味のある指標を追跡した点にあります。夫婦そろってのサプリメント併用を検討した研究はこれまで少なく、その意味でも価値のあるデータといえます。

一方で限界も少なくありません。第一に後方視的な研究であり、サプリメントを希望した夫婦とそうでない夫婦のあいだに、もともとの妊よう性や生活習慣の違いがあった可能性を否定できません。実際、卵管が片側閉塞していた割合は治療群42.9%、対照群62.8%と有意な差があり(P=0.004)、対照群のほうが妊娠しにくい背景を持っていた可能性があります。第二に、サンプルサイズは中規模にとどまり、食事内容など介入以外の要因は統制されていません。第三に、追跡されたのは臨床的妊娠までであり、その後の生児出生率については明らかにされていません。第四に、服薬遵守は自己申告に基づいており、客観的な指標による検証は行われていません。著者ら自身も、今後は多施設共同のランダム化比較試験によって、これらの知見を確認する必要があるとしています。

日本の生殖医療現場にとっての意味

日本では、体外受精を希望しても順番待ちとなる期間や、保険適用の回数制限との兼ね合いで、自然妊娠を目指す期間が生じる場面が少なくありません。このような待機期間の過ごし方について、これまで明確なエビデンスに基づく指針は乏しいのが実情です。今回の結果は、複合的な栄養補助食品の摂取が、少なくとも短期的な自然妊娠率の向上と関連しうることを示しており、待機期間中の一つの選択肢として位置づけられる可能性があります。

ただし、今回示されたのは特定の配合による製剤を用いた場合の結果であり、あらゆるサプリメントに同様の効果が期待できるわけではありません。また、後方視的研究である以上、因果関係を断定することはできず、標準的な診療として推奨するには、前向きのランダム化比較試験による検証が求められます。臨床現場では、他の妊よう性関連因子(年齢、BMI、卵管の状態など)への配慮と組み合わせたうえで、患者への説明のあり方を検討することが出発点になると考えられます。

おわりに

今回の研究は、体外受精を待つカップルにおいて、夫婦そろっての複合的な栄養補助食品の摂取が、自然妊娠率の向上と関連することを示したものです。子宮内膜の厚さの変化など、生物学的に説明可能な所見もあわせて報告されていますが、後方視的研究としての限界があることも事実です。生児出生率を含めた前向きの多施設共同研究による検証が、今後の課題として残されています。

参考文献

1. Bauer MJ, Halat H, Chedraui P, Lipovac M, Imhof M, Mitrovic Jovanovic A. Effect of patient and partner preconceptional nutraceutical supplementation on the onset of natural pregnancy: a retrospective study. Rev Assoc Med Bras. 2026;72(5):e20260081. doi:10.1590/1806-9282.20260081.

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