2回目のIVFはむしろチャンス──再挑戦は「早いほど良い」

体外受精(IVF)の累積生児出生率は、治療を完遂した場合でも一般集団でおよそ33%にとどまるとされ、母体年齢や採卵数によって大きく変動します。しかし、実際にIVFに挑む女性のうち、自分自身の成功確率を正確に見積もれていたのはわずか4人に1人であり、多くは自らの成功率を過大評価していたことも報告されています。この期待と現実のギャップは、1回目の治療がうまくいかなかったときの落胆や、その後の治療中断につながりやすいと指摘されてきました。

実際、1回目のIVFが不成功に終わった後、治療を中断してしまう患者の割合は37〜50%にのぼるとする報告があり、なかでも4人に1人はその時点で治療から離脱するとされています。この傾向は医療費が公的にカバーされている制度下でも一定程度みられることから、経済的な要因だけでは説明がつかないと考えられています。こうした背景のもと、1回目の治療結果が2回目の治療成績をどの程度予測しうるのかは、患者への説明や治療計画を組み立てるうえで重要な問いとなっています。

この問いに答えるため、Journal of Assisted Reproduction and Genetics誌(2026年)に、イタリア・ローマの生殖医療施設で2015年から2020年にかけて実施された、2年以内に2回の刺激周期を受けた1,190組を対象とする後方視的研究が掲載されました(doi:10.1007/s10815-026-03961-8)。1回目の治療結果が2回目の胚培養や妊娠成績とどう関連するのか、そして周期間の間隔がどのような影響を持つのかを検証した内容です。

方法──1,190組の2回連続の顕微授精周期を追跡した

対象は、ローマの単一施設で2015年から2020年に、胚盤胞培養を予定した刺激周期による顕微授精(ICSI)を2年以内に2回受けた1,190組です。平均母体年齢は38.7±3.8歳、平均AMH(抗ミュラー管ホルモン、卵巣予備能の指標)は1.7±1.5ng/mlで、重度男性因子による不妊は18.8%に認められました。1回目と2回目の平均間隔は3.1か月、336組(28%)は同一月経周期内で2回採卵を行う「デュオスティム」法を用いていました。1回目で胚盤胞が1個以上得られた796周期のうち、着床前染色体異数性検査(PGT-A)が実施されたのは699周期(87.8%)でした。

検討された主な指標は、採取された卵子(正確には卵丘卵子複合体、COC)の数、得られた胚盤胞の数、COCあたりの胚盤胞形成率(卵子の発育能の指標)、そして2回目の周期で少なくとも1回の生児出生に至る割合(累積生児出生率、CLBR)です。1回目の周期の特徴(母体年齢、不妊の原因や期間、基礎ホルモン値、胚培養・臨床成績、周期間隔、デュオスティムの有無、刺激プロトコルの違いなど)との関連が、単変量・多変量の統計モデルで解析されました。

採卵数は半数の患者で増加、卵子ゼロだった患者の87%が2回目で獲得

2回目の周期では、主要な指標すべてで有意な改善がみられました。COC数は平均7.8±5.8個から8.6±6.3個へと増加し(+0.7個、95%信頼区間0.5〜1.0、p<0.001)、得られた胚盤胞数は1.5±1.6個から2.0±2.0個へ(+0.5個、95%信頼区間0.3〜0.6、p<0.001)、COCあたりの胚盤胞形成率は17.9%から21.2%へ(+3.3ポイント、95%信頼区間1.8〜4.8、p<0.001)、いずれも改善しました。1回目と2回目のCOC数の相関は比較的強かった一方(相関係数0.74)、胚盤胞数や形成率の相関は弱く、卵子の量は再現性がある一方で、卵子の質的な発育能は周期ごとに変動しやすいことを示しています。

2回目の採卵では、患者の50%がより多くのCOCを獲得し、12%が同数、2回連続で採卵に至らなかった患者は全体のわずか1%でした。とりわけ注目されるのは、1回目に卵子が1個も採れなかった49人のうち、87%が2回目にはCOCを獲得できたという結果です。周期間隔が1か月延びるごとに、より多くのCOCを獲得できる可能性が4%相対的に低下することも示されました(オッズ比0.96、95%信頼区間0.93〜0.98、p<0.001)。一方、FSH開始用量の変更やLH活性の追加・除去、デュオスティムの採用は、いずれもCOC数の増加とは関連していませんでした。

胚盤胞ゼロだった33%のうち、6割は2回目で成功

1回目に胚盤胞が1個も得られなかった患者は全体の33%を占めましたが、そのうち2回連続で胚盤胞を得られなかったのは13%にとどまり、61%は2回目に胚盤胞形成に成功しました。より多くの胚盤胞を得られる可能性は、母体年齢が1歳上がるごとに6%相対的に低下し(オッズ比0.94、95%信頼区間0.91〜0.97、p<0.001)、AMH値が高いほど上昇し(オッズ比1.02、95%信頼区間1.01〜1.02、p<0.001)、周期間隔が1か月延びるごとに5%相対的に低下しました(オッズ比0.95、95%信頼区間0.93〜0.98、p<0.001)。

卵子の発育能(COCあたりの胚盤胞形成率)についても、26%の患者で変わらず、42%で改善しました。改善の可能性は、母体年齢が1歳上がるごとに3%(オッズ比0.97、95%信頼区間0.93〜0.99、p=0.04)、周期間隔が1か月延びるごとに4%(オッズ比0.96、95%信頼区間0.94〜0.99、p=0.004)、それぞれ相対的に低下しました。重度男性因子による不妊がある患者でも、2回目の周期で成績が改善する傾向がみられ、男性因子は初期の胚発育には影響しても、正倍数性が確認された胚盤胞1個あたりの妊孕性そのものは損なわない可能性が示唆されています。

2回目の生児出生率は23.2%、1回目の成否とは無関係

2回の周期を完遂した1,134組のうち、1回目で生児出生に至らなかった1,089組の23.2%(253組)が、2回目で少なくとも1回の生児出生を達成しました。一方、1回目で生児出生に至った45組(1回目のCLBR 24.4%)のうち11組は、2回目でも追加の生児出生を得ています。2回目の生児出生の可能性は、1回目に生児出生があったかどうかとは有意に関連しておらず(オッズ比0.82、95%信頼区間0.41〜1.63、p=0.568)、AMHで調整しても結果は変わりませんでした。

2回目の生児出生と有意に関連していたのは、母体年齢と1回目のCOC獲得数の2つのみでした。母体年齢が1歳上がるごとに、2回目で生児出生に至る可能性はおよそ11%相対的に低下し(オッズ比0.89、95%信頼区間0.86〜0.92、p<0.001)、1回目のCOC獲得数が多いほど2回目の成功率は高まっていました(オッズ比1.06、95%信頼区間1.04〜1.09、p<0.001)。刺激プロトコルの変更(FSH用量、LH活性の追加・除去、デュオスティムの採用)は、いずれの主要な成績とも関連していませんでした。

鍵は「間隔」──効果は6か月でプラトーに

周期間隔が短いほど、COC数、胚盤胞数、胚盤胞形成率のいずれも改善する傾向が一貫して認められました。研究チームは、1回目の刺激により卵巣の内分泌・傍分泌環境が変化し、二次卵胞が刺激に反応しやすい前胞状卵胞の段階へと移行することが、この効果の背景にある可能性を挙げています。二次卵胞がこの段階に到達するまでにはおよそ2〜3か月を要するとされ、これは今回の研究で観察された周期間隔の中央値(3.1か月)とも符合します。ただし、この良い効果は1回目の採卵からおよそ6か月で消失し、それ以降は母体年齢の上昇による悪影響が上回っていく可能性が示されています。

デュオスティム(同一月経周期内での2回目の刺激・採卵)を用いた場合、2回目の採卵までにかかる期間はおよそ18日に短縮されます。今回の解析では、デュオスティムの採用自体は主要な成績の改善とは統計学的に関連していませんでしたが、周期間隔を最短化する手段として、治療の中断を防ぎ、卵巣の加齢による影響を抑える効果的な選択肢になりうると位置づけられています。

日本の生殖医療現場にとっての意味

日本の生殖医療の現場では、1回目のIVFが不成功に終わった場合、次の治療再開までの時期や、そもそも治療を継続するかどうかについて、患者ごとに判断が分かれる場面が多くみられます。今回の結果は、1回目の採卵数がゼロであったり、胚盤胞が得られなかったりした場合でも、それが2回目の治療成績を直接的に予測するものではないことを示しています。特に、1回目に卵子が全く採れなかった患者の87%が2回目にはCOCを獲得できたという結果は、初回不成功が必ずしも治療継続の意欲を削ぐ根拠にはならないことを裏づける材料になります。

一方で、周期間隔が短いほど成績が良好であるという知見は、患者への説明や治療計画において、1回目の結果を受けてすぐに次の一手を検討する「マルチサイクル」の考え方を後押しするものといえます。日本の臨床現場でも、1回目の不成功をどう受け止め、いつ次の治療に進むかについて、母体年齢や卵巣予備能を踏まえた個別化された説明のあり方が、今後の議論の出発点になると考えられます。

研究の強みと限界

本研究の強みは、1,190組という規模の大きさと、同一施設内で1回目・2回目の治療成績を直接比較できた点、そして胚培養の成績だけでなく妊娠・出産まで追跡した点にあります。

一方で限界もあります。第一に、POSEIDON分類やボローニャ基準といった予後別のサブグループでの解析は、サンプル数の制約から実施できませんでした。第二に、平均母体年齢が38.7歳とやや高く、刺激プロトコル(ゴナドトロピンの種類・用量、トリガー法)が3分の1超の症例で変更されていた点も、結果の解釈に留意が必要です。第三に、単一施設のデータであるため、他施設への一般化には慎重さが求められます。第四に、2回目の治療に進んだ患者群は、一般的な初回IVF患者と比べて年齢がやや高い一方でAMH値もやや高い傾向にあり、卵巣予備能に恵まれているために治療継続への意欲が高い患者群である可能性も指摘されています。

おわりに

今回の研究は、1回目のIVF周期の結果が2回目の治療成績を予測するものではないことを、これまでにない規模のデータで示すものです。COCの獲得数、胚盤胞の形成、生児出生のいずれについても、1回目の不成功は2回目の成功を妨げるものではなく、むしろ周期間隔を短く保つことが良好な成績と関連していました。母体年齢と卵巣予備能が依然として最も重要な予後因子であることに変わりはありませんが、1回目の治療結果にかかわらず早期の再挑戦を選択肢として提示する「マルチサイクル」型のカウンセリングのあり方が、今後の診療の土台になりうると考えられます。

参考文献

1. Ruffa A, Cimadomo D, Taggi M, Innocenti F, Pittana E, Battista F, Fabozzi G, Morelli M, Guido M, Albricci L, Fiorentino G, Rienzi L, Ubaldi FM, Vaiarelli A. Another round, another chance: oocyte developmental competence and outcomes in second IVF attempts—the earlier, the better. J Assist Reprod Genet 2026. doi:10.1007/s10815-026-03961-8.

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